銀座のあやかし日記

胡桃や怪子の独り言

いいのよ…

子供の頃

 

我が家の茶の間には

いろんなお客さんが来ていた。

 

みんな祖母のお茶飲み友達

 

その中には

あの美輪明宏さんも

 

いつも素敵な装いと

お洒落な帽子と

小さな白い犬を連れて。

 

祖母とお茶を飲み

おしゃべりをしていた。

 

美輪さんが帰ったとたん

私は祖母に

「今の人は、男なの? 女なの?」

と尋ねる。

 

祖母は私に

「いいのよ」  

と一言だけ

 

とても静かな優しい声で

 

今の私には

あの時祖母が言った

「いいのよ」

が全てを凝縮した

素晴らしい答えだと

わかっている。

 

でも

幼かった私に

「いいのよ」

を理解する事など

 できるはずなど無い。

 

何がどう「いいのよ」なのか

しつこく尋ねたのを

おぼえている。

 

そんな私に祖母は 

とても静かな優しい声で

 

「今はわからなくてもいいのよ」

「きっと後でわかるから」

「だから」

「いいのよ」

 

今になって思う。

 

私の祖母は

もしかしたら...

 

オカマだったのかもしれない。